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の認可を受けなければならない。変更の効力は認可を受けることによって発生するもので、したがって、認可を受けなければ法的に変更したことにならないからである。
なお、命令の内容として、「変更案」自体を受命者に示すことは、自主的な保安基準である予防規程の性格から好ましくないと考えられる。

 

一〇、 危険物取扱者免状返納命令
都道府県知事は、その管轄区域内にある製造所等(移送中の移動タンク貯蔵所を含む)において、消防法等の規定に違反した危険物取扱者に対して危険物取扱者としての資格を将来にわたって消滅させることができる。
(一)命令の主体、要件及び客体
都道府県知事は、その管轄区域内において違反があった場合には、自己の交付した免状所有者のみにとどまらず、他の知事が交付した免状の所有者に対しても本命令を行うことができる。なぜならば、免状の交付や本命令は、本来、国の行政事務であり、都道府県知事が国に代わり、国の機関として行ういわゆる機関委任事務であるから、各都道府県知事が行う本命令等は行政主体である国に代わって行うものであってその効果は、国に帰属する。つまり、国が本命令を行ったことになる。したがって、免状を交付した知事とその免状の返納を命ずる知事とが異なっていても、結局、国が交付した免状を国自らが返納を命じたことになるからである。しかも、本命令は、免許所有者に対するいわゆる対人的処分であるから、例えば、製造所等の改修命令や使用停止命令などの対物的処分の場合と異なり、免許所有者として違反を行えばどこの知事から交付された免状であろうと、当該違反場所を管轄する知事の処分の対象となる。
なお、市町村長等の行う製造所等の許可や措置命令なども国の機関委任事務であるから、本命令の場合と同様、国が行ったことになるわけではあるが、これらの処分は、物そのものに対するいわゆる対物的処分である。したがって、その処分権は当該施設の設置場所を管轄する市町村長等に限定される。
(二)命令の内容
「危険物取扱者免状の返納」とは、当該免状の効力を直ちに失わせ、危険物取扱者の資格を剥奪することである。返納を命ぜられた者が現実に返納するか否かを問わない。
免状の返納を命ぜられた者が当該免状を返納しないときは、別途命令違反として罰則の適用がある。
(三)命令の上申
命令の主体は、都道府県知事であるから、命令に該当するような違反事案が発生した場合、市町村長は、当該違反事案の調査書類を添付して知事に上申し、知事の意思決定を得ることが必要である。

 

おわりに
火災により痛ましい惨事が発生した場合、各方面から消防責任について厳しい論議が行われる。その論議の内容は、消防行政全般にわたっての社会の要望、注文、批判等を反映したものである。こうした消防責任についての論議の中で、考えておかなければならないのは、消防がその権限を行使しなかった場合にどのような責任があるかという問題である。消防が適切な措置命令を発動していたならば、この事故は防げたはずであるとして消防の権限不行使の責任を追求するケースが考えられる。このような裁判例は消防行政ではまだ少ないが、他の行政における権限不行使の責任を追及する訴訟の動向等に消防行政としても注目しておく必要がある。

 

 

 

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